遠寿院

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第31回修法研修会

第31回修法研修会(2010年12月13日)
『宗派仏教を超えて』-日本仏教を考え直す-
講師 日本宗教学会会長 東京大学教授 島薗進先生

 日本の仏教は天台宗、真言宗、浄土宗、臨済宗、浄土真宗、曹洞宗、日蓮宗などの宗派に分かれており、宗派ごとに緊密な組織を形作っている。宗祖は偉大な指導者として崇敬され、その権威を疑うことは許されない。僧侶の訓練はあいかわらずもっぱら宗門の本山で、宗派の教義や儀礼のシステムを教え、習得するという形でなされている。これは正法の継承と言えるだろうか。

 日本の宗派仏教のあり方は仏教本来の受戒した僧が「僧伽」(サンガ)を形成し、それが三宝の一つとして尊ばれるという形とは大いに異なっている。元来、仏教の伝統では受戒式を通してもっとも重要な何かが伝えられていくと信じられてきた。日本の仏教はその基本から逸脱し、異なる方向へと展開してきた。そのことと宗派仏教化は密接に結びついている。そして、それは鎌倉仏教において末法思想が重んじられ、正法の継承という僧団の存立理由がもはや成り立たないと考えられたことに多くを負っている。

 元来尊ばれて来た正法の理念は、日本仏教においてどこへ行ったのだろうか。また、正法の理念が仏教の社会倫理の中心に位置したのだったとしたら、現代仏教はどこに社会倫理の基礎を見出していけばよいのだろうか。戒律の否定、ないし軽視という道をたどった日本仏教において、現代社会の諸問題に応じて行く理念をどこに求めていけばよいのだろうか。

 かつて、日本仏教こそ大乗仏教の精髄を実現した、そして鎌倉新仏教こそその現れだというような宗派主義的な仏教史解釈がなお通用している。しかし、国際的な交流が深まり、世界の仏教の中で日本仏教の位置を自覚していくべきときに、それでよいのだろうか。世界仏教の中で適切な日本仏教の位置づけができるような仏教理解、日本仏教理解を求めていくべきだろう。


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第31回修法研修会
宗教新聞(2010年1月5、20日合併号)

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